2010年6月26日開催 第1回館山セミナーのメモです。
文責はメモを取ったおのじにありますがメモによって生じる事故等に対しての責任は一切負いません。

千葉県初の減圧症に関するセミナー開催は大変有意義でした。講師の山見先生をはじめ運営スタッフの皆様に深く感謝いたします

第1回 館山セミナー(メモ)

 

【減圧症とは?】

1 改めて減圧症って何?

20年前と現在の違い

水中

   窒素→肺→血液中→体組織

浮上時

   窒素が排出されるがされなかった窒素が気泡となり減圧症の原因となる

 

症状がでたとき「減圧症」

症状がなければ診断しない

 

2 窒素はどこに溶けやすい?

  

3 気泡ができやすい部位はどこ?

  脊髄:血流がよく溶けやすい 関節:血流が悪く溶けにくい

  筋肉:運動すると分配されやすい

  浮上時は脊髄が排出されやすく、関節は排出されにくい

 

4 よく見られる症状は?

  脊髄:手足のしびれ、感覚障害 75.3

  関節:関節周囲の痛み     43

  内耳:めまい、難聴      13.3

  筋肉:筋肉痛         16.5

  他 :頭痛、肩こり、だるさ、息切れ、かゆみ、むくみ、吐き気

 

5 気泡ができるとどうして症状が出るの?

  気泡が神経を圧迫し、神経電流の通りが悪くなる

  気泡が血管を圧迫し、血流が悪くなり神経に酸素を運べなくなる

  脳で発症しないのは脳内は比較的、スペースがあるからではないか、脊髄は神経や血管が詰まっているかでやすい

  気泡は1箇所に集まるのではなくまた大きい気泡、小さい気泡とさまざまであり神経の種類によっても違う

 

  20年前では6時間以内に95%が発症とあったが、現在では何日たっても発症する

 

 

 

6 どのくらいの人が減圧症になっているの?

  8001,000/年 重症者 1/10,000回 軽症者1/2,000

  

7 どんな人が減圧症になっているの?

  レジャーダイバー84

  仕事      16%(インストラクター、ガイド12% 漁師2% 海中土木2%)

 

8 昔の減圧症と今の減圧症って違うの?

  今はV字型の潜水パターン(深く短い時間の潜水 例24m深 40分間)で脊髄型

  昔は作業潜水から箱型で(浅く長い潜水 例15m深 100分間)で関節型

   どちらもUSNAVY無減圧潜水を行っていて発症

 

9 減圧症って怖い病気なんでしょ?

  気泡はできても症状がでない、一部は骨壊死

  気づかない〜隠れ減圧症

  症状があっても放置〜隠れ減圧症

 

10        減圧障害と減圧症は違う病気なの?

減圧障害:減圧に際して体に障害

 

動脈ガス塞栓の原因

 その1:肺の気圧外傷

 その2:静脈内気泡が肺血管を通過〜肺の気泡が排出されず肺毛細血管を通過し、心臓から脳へ脳塞栓発症

 その3:卵円孔開存〜静脈内から心臓→卵円孔→動脈→肺→肺気泡

 

【減圧症の体験談とその解説】

 

【減圧症になりやすい潜り方、なりにくい潜り方】

1 減圧症を起こしやすくする誘因

 

2 効果的な浮上速度と安全停止

 

3 ディープストップはリスクを下げる

  25m深に2025分間潜水 ディープストップ(以下「DS」)15mに30

シャローストップ(以下「SS」)6mに3〜5分が気泡発生が最小であった

 

4 ディープストップは意味がない<水深50m以深への潜水>

  85060m深 DSしても気泡は減少しない 

結論DSは潜水深度によって行うべき

 

5 ディープストップはリスクを上げる<水深20mの潜水>

  3620m深 40分間潜水 浮上速度10/分 DS10m深4分間 4m深で3分間安全停止したが気泡は減らない

 

6 ディープストップはシャローストップの代わりにはならない

  25m以深にはDSに意味があるが25m以深では意味がない

 

7 リバースプロフィールはリスクを上げる<マルチレベルダイビング>

  ギニアピッグによる動物実験  

フォワードダイブ 36m深30分間潜水→24m深30分間→12m深30分間 減圧症なし

  リバースダイブ  12m深30分間→24m深30分間→36m深30分間 55%が罹患

 

8 リバースダイブプロフィールはリスクを上げる<反復潜水>

 

9 水深10mより浅いダイビングでも減圧症は発症する

  586名 36m 0名 69 ●名 12m以深 27

  浅水飽和潜水

 

10        推奨される浮上と安全停止

10分で25m深20分間→25m深から15m深へ9/分で浮上 15m深でDS25

15m深から6m深へ6/分で浮上 6m深でSS10

6m深から0m深へ3/分で浮上

 

11        良いプロフィールと悪いプロフィール

ENからEX48分間

1520分で最大水深へ 1520分間潜水 最後の1520分は減圧中心のダイビング

 

減圧症のリスク(少〜不可)とDSの可否(−、する、しない)

15m深 少− 1520m深 低− 2025m深 中− 2530m深 高する

 30m〜以深 不可(潜水不可の意)したがってDSはしない

 

○体質や体調による影響

   1 男性はリスクが高い 2250名分母で2.6倍の数値 ただこれはダイビングスタイル(例 深いところへ行く、長い潜水等) 女性は慎重なダイビングが多い

  

  2 42歳以上はリスクが高い

    1,299名分母 1821歳の3倍 2641歳未満は1821歳より高い

 

  3 年齢が高くて浮上スピードが速いとリスクが高くなる

    50名男性 9/分で浮上と17/分で浮上の2グループ どちらも6mに3分 3mに15分安全停止 37歳未満と以上に差がある、37歳以上に気泡が多い17/分浮上グループはさらに気泡が多い

 

  4 年齢差は誘因にならないという研究報告もある

    1,516名男性 226名女性 質問紙による回答 減圧症罹患者190名 男性1.52/1,000 女性1.27/1,000 と違いがない 質問による回答のため更なる研究が必要

 

  5 体脂肪率が高いとリスクも高い

    ●

 

  6 体脂肪率が高くて浮上スピードが速いと特にリスクが高くなる

    50名男性 35m深25分 9/分と17/分の浮上スピードの2グループ

    では17/分の方が気泡数が多い

 

○嗜好や行動による行動

1 飲酒はリスクを上げる

  アルコールは利尿作用がある、血流が悪くなる

  ダイビング直前の飲酒 もちろん不可

 

2 水不足はリスクを上げる

  豚で実験 脱水群で死亡34.6

 

3 喫煙はリスクを上げる 喫煙者は重症減圧症が多い

  リスクは上げないが発症すると重症化する結果が出ている

 

4 潜水24時間前の運動はリスクを下げる

 12名 最大心拍90%を3分、その後50%を2分を8クール後18m深に809/分で浮上 気泡のバブルグレード 非運動グループ0.98/平方cm 運動グループ0.22/平方cmと差がある

 

5 潜水2時間前の運動はリスクを下げる

  16名軍人 非運動グループ1.25 運動グループ0.44 機序はガス核に影響している?

 

○潜水2時間前に運動をして気泡が増加したダイバーはいない

1 潜水2時間前の運動はリスクを下げる

 

2 減圧中に運動するとリスクが下がる

    29名男性 上肢のみ、下肢のみ 運動なし3グループで実験 運動した方が気泡少ない

 

  3 潜水後に運動するとリスクが上がる

    屈伸運動をすると気泡が急速に発生する

 4 潜水後に運動するとリスクが上がる(非死亡例)

   

 5 潜水後に運動するとリスクが上がる(死亡例)

 

 6 四肢の労作

 

 7 最大酸素摂取量が多いダイバーはリスクが低い

   50名男性 3525

 

 8 酸素摂取量が40ml//kgより低いとリスクが高い

 

 9 潜水後の寒冷曝露と熱いシャワーはリスクを上げる

   潜水後10℃気温のグループと40℃気温のグループ 10℃のグループは4名中340℃のグループは1名が気泡多い

   脊髄型は関係ないかも知れないが関節型は関係あり

 

10        潜水前に赤外線サウナに入ったダイバーはリスクが低くなる

16名ダイバー 3065℃サウナ

  

○環境による影響

1 水温が高いとリスクが高くなる

  20名男性 20名女性 水温30℃ 最大潜水深度と脱水は相関関係にある

 

2 潜水後に冷えるとリスクが高くなる

  177症例 差が大きいとリスク高まる

 

3 2ダイブしたら18時間は飛行機に乗らない

  283名 1ダイブ後12時間後搭乗と2ダイブ以上の潜水後の15時間後搭乗で発症に差

 

4 潜水後の航空機搭乗実験結果<1日複数回の潜水>

   

  5  プレッシャーグループがAEであればリスクは低い

    反復グループ(プレッシャーグループ)AE0 FG1 H5 I4 J1 KL2

 

  6 航空機搭乗のガイドライン

   キャビン圧2,0008,000FT

 

  7 高度移動のガイドライン

   400mで発症に差がある

 

○最後にまとめ

減圧ダイビングは不可、安全停止563分、9/分の浮上スピードを守ってプレッシャーグループをACにする GLでは3条件を守っても14.3%で発症

 

いつも潜るポイントの最大深度と時間配分を改めて考えてください

 

●後に潜水プロフィールを見直そう

 

  潜水後1週間以内に体調不良があったら減圧症を疑う

 

  検診を受けよう

 

 

 

  減圧症は確率の病気である、誰でもいつでも罹る可能性がある。恐れることはないがきちんと対処しよう

 特に発症後の治療において鬱状態が多く見られ減圧症自体に加え鬱治療も視野に 

 

○質疑応答

1 睡眠不足と減圧症に関係はあるか

  文献ではないが雑誌に出ていた記憶がある 疲労と減圧症は関係があると思われるが疲労の定義が難しい

 

 2 検診の内容は如何に

   心理検査 減圧症になっていないと思っても実は罹患している場合もある

 

3 減圧中運動は@深呼吸は有効かA最大酸素摂取量はヘモグロビン量に関係があるか

  ダイバーのデータではないがスポーツ科学では赤血球が多ければ血液は流れにくいが少ないと酸素の運搬が減るデータがある ダイバーでは窒素の排出が遅れるという可能性がありわからない

 

4 高齢者のダイビング

  高齢だから罹患しやすいとはいえない ダイバーの年齢比率やダイビングプロフィール(浅いダイビング、余裕あるダイビング)による違いもあるかも知れない

これでお終いです。ありがとうございました。

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