*注:ここで使われている写真はすべてイメージ写真である。
椰子ガニの肉は、椰子の実の香りがする。
大きな爪にたっぷりと入ったその肉は、大味だが美味い。
しかし、なんと言っても椰子ガニの本当の美味さは、腹に入ったミソにある。
以前、カイパン島の繁華街にあるレストランで、椰子ガニを食べたことがある。
しかし、その時は、くせのある強烈な匂いに閉口したものだが、これは別物のようだ。
新鮮だと言うことはこういうことなのであろう。
腹をくずしミソを取り、炊き立てのご飯にぶっかける。
豪快に箸でかき回し、ざぶざぶっと喰う。
野趣あふれるその味は、濃厚だが嫌味がなく、失った体力を即座に回復させてくれる。
腹が温まった我々は、食後の休憩を取り次なるポイントへ向かった。
「芭蕉ポイント・・・奥の砂利道」だ。
13:29。多少波があるがエントリーに問題はない。
遠くにバラクーダの影が見える。
ここはドロップだが、深場には行かず27分でエキジット。
若干場所を換えて芭蕉ポイントの浅場へエントリー。
「石切場」である。
命名どおり、石切場のように大きな岩が点在するその風景は、いにしえからの自然の営みを感じさせる。
魚影は薄いが、時折カスミアジやオオフエヤッコダイなどが見られた。
陸側の崖に亀裂があり、奥にアカマツカサガ群れていた。
エントリーから30分以上が過ぎている。
オカシラの指示でエアーの残量を確認する。
船には限られた数のタンクしか積むことが出来ない。
しかし、できるだけ多くのポイントを潜りたい我々は、タンク1本で2本のダイビングをする計画を立てている。
奥の砂利道で半分。石切場で半分だ。
私のエアーが底をつきかけていた。
オカシラの指示で仏様のエアーを分けてもらうことにした。
分けてもらうと言っても、タンクからエアーを移すわけではない。
仏様の予備のセカンドステージを使わせてもらうのだ。
仏様の予備はエアツー。
左肩から出ている浮力調整用の短いジャバラホースに、空気を吸うためのシステムが併用されている物だ。
通常エアツーは、短いジャバラホース側を自分が使い、今まで吸っていた長いセカンドステージを相手に渡す。
しかし、気がつくとどういう訳か、私がジャバラホース側を咥えていた。
その形のままダイビングを続ける。
仏様の左肩近くに、顎を突き出した私がぶら下がっているという図。
ジャバラホースのマウスピースを咥え、必死に仏様にくっついて行く姿は、他のメンバーの笑いを誘い、
皆のエアーを一気に減らした。
15:36。エアーぎりぎり、48分間のダイビングを終え、船はメインビーチへと戻った。
メインビーチに戻ると、程なくマイクを乗せたボートが到着した。
我々の船に横付けされたボートからは、マイクと一緒に皮がむかれ赤黒い筋肉をさらした山羊が届けられた。
内臓は抜かれている。
マイクは自慢げに山羊を持ち、冷蔵庫に突っ込んだ。
これこそ、午前中にマイクがライフルで仕留めた獲物であった。