*注:ここで使われている写真はすべてイメージ写真である。
「天狗岩」は、まったりとした雰囲気のポイントだ。
切り立ったドロップポイントの多いこの島の中、ここはメインビーチと共にダイビングに適した環境を持った場所である。
午前8時54分、潜行開始。
最大深度15.2メートル。朝の遠泳の疲れを癒すにはもってこいの深度と広さだ。
流れに沿ってのんびりと移動していると、仏様が何かを見つけ、我々を呼んだ。
行ってみると地面の穴にタコがうごめいていた。
すかさず私が穴に棒を突っ込む。
タコはたまらず、突っ込んだ棒に数本の腕を絡めてくる。
棒と腕を一束につかみ、えいやっとばかりに引っ張り出す。
穴から出たタコは、くるくると体色を変化させ、私の腕に絡みつく。
オカシラが、私の腕からタコを引き剥がす。
タコはオカシラの腕に絡みつくが、オカシラは構わずタコの口に指を突っ込みびりびりっとひっくり返す。
タコは絶命したようだが、腕は相変わらずうごめいていた。
私はそのタコを受け取り、ポケットに押し込み、何事もなかったかのようにファンダイブを続けた。
暫くすると、また仏様がタコを見つけた。
後は、先ほどと全く同じ展開であった。
なんという連携のよさであろうか。
朝、エビを獲ることが出来なかった口惜しさが、このような連携プレーを生み出したと言える。
昨日のシャコガイといい、今日のタコといい、「天狗岩」は我々にとって漁場のようだ。
ともあれ2匹の獲物をポケットに、意気揚揚と船に上がった我々は、早速自然の恵みをいただくことにした。
タコはたっぷりと塩を使い、丁寧に皮を剥がす。
足は細かくちょん切っても動いている。
真っ白な肉のその足を、吸盤がついたままわさび醤油をつけ、口の中に放り込む。
吸盤が舌やほっぺの裏に吸い付く感触を楽しみながら、呑み込む。
なんともいえない自然の味だ。
取れたてのタコは煮ても美味い。
柔らかな感触に舌鼓を打つ。

ふと自分の腕を見ると、点々と吸盤が張り付いた痕がついていた。
タコの抵抗の跡である。
自然の恵みに感謝しつつ、我々はメインビーチへと戻った。